EXHIBITIONS
「四匹の狐」高橋恊子個展
2025年11月6日(木)~11月16日(日)
13:00-19:00(金-20:00)最終日17:00
会期中休廊/10(月)、11(火)、12(水)
陶作家・髙橋恊子が茨城県笠間市に移り住み出会った「4匹の狐」の物語。
作家はこの伝承を起点にして、代表作・ライフワークである白狐の陶人形の制作が始まりました。地域に息づく記憶と伝承が陶での造形に結び付き、さらに民話の世界への学びが深化ました。
今展では起点である茨城県の伝承「四匹の狐」の物語の作品を中心に、私たちの国土の豊かな原風景を呼び起こし、その記憶の行方を問いかけます。
<作家在廊予定>
6日(木)、8日(土)14時~、9日(日)16時~、15日(土)、16日(日)
「四匹の狐」
むかし、静の森にな、仲のいい四兄弟きつねが住んでいたんだ。
長男は源太郎、次男は甚二郎、三男は紋三郎、四男は四郎介といった。
そのころはな、悪いきつねもたくさん住んでいて、里の村人らを苦しめていたんだ。
せっかく作った野菜を盗まれたり、刈り取り前の田んぼをめちゃくちゃにされたりしてな、皆ほんとうに困っておった。ときには人に化けて、道行く村人をだまして荷物を奪ったり川に突き落とすようないたずらもされたりした。
心優しい四兄弟はな、そんなきつねたちを見て、同じきつねとしてとても恥ずかしいと思ったんだ。
そこで、長男源太郎が兄弟を集めて言った。
「おれたちきつねの仲間には心がけが悪いやつもいる。そんなやつらが村人らを苦しめている罪滅ぼしとしておれたちは力を合わせて人間を守るきつねになろうじゃないか」
弟たちは喜んで、そうだそうだ、そうしよう、と賛成をした。
そこで役割分担を決めることにしたんだ。
源太郎は、「わたしは長男だからここ静の地を守らねばならない。この地には那珂川と久慈川、大きな川がある。私は川を守る役割につこうと思う」と言った。
甚二郎は、「わたしは野を守る役割につこう、そして田畑がより豊かになるように導いてやろう」と、那珂町の米崎へと向かった。
そして紋三郎は、「わたしは山を守ろう。山には家を建てるための木材や土台になる石や砂もたくさんある。それらを教えたいし木を植えて山を育てることも教えてやらねばならんな」と笠間に行った。
そして末っ子の四郎介は「ぼくは一番若いし体力もある。だから海を守ることにするよ、漁のことや塩作りも教えてやりたい」と那珂湊へ飛んでいった。
こうしてそれぞれに土地の開墾に協力しながら人々のくらしが豊かになるようにたくさんのことを教え、導いていったんだ。
やがて、その土地に城がたち、兄弟たちはそれぞれの城の稲荷神社に祀られることになった。
源太郎は瓜連城に、甚二郎は米崎城に、紋三郎は笠間城に、四郎介は湊城。
源太郎は今の常福寺、ここに悪いものが入ってこないように、その方角の鬼門を守るように、稲荷社に祀られ、甚二郎は本米崎の田畑が見回せる高台の稲荷神社に、紋三郎は笠間稲荷に、四郎介はむかし湊城と呼ばれた、いひん閣跡の近くにある四郎介稲荷に祀られて、今もたくさんの人々の信仰を集めている。
そして今も常陸の国の川、野、山、海を守っているんだな。
おしまい。
- 源太郎 ― 川を守る/源太郎稲荷神社(常福寺)
源太郎は那珂川や久慈川といった大河を護る役割を担い、水の恵みをもたらす存在として常福寺の稲荷に祀られています。清流を守るその姿は、土地の豊かさを象徴します。 - 甚二郎 ― 野を導く/甚次郎稲荷神社
甚二郎は田畑の実りを守る狐で、米崎の地へ向かいました。農耕を導き、村人の糧を保証する存在として高台の稲荷に祀られ、豊穣を願う人々の信仰を集めています。 - 紋三郎 ― 山を育てる/笠間稲荷神社
紋三郎は笠間の山を守り、木や石を暮らしに役立てる知恵を授けました。笠間稲荷に祀られ、山を育てることの重要さを今に伝えています。 - 四郎介 ― 海を護る/四郎介稲荷神社
四郎介は那珂湊へ赴き、漁や塩作りを人々に教えました。港町の守護者として稲荷に祀られ、海の恵みを象徴する存在となっています。
<高橋 協子 プロフィール>
1970年 神奈川県茅ヶ崎市に生まれる。
1986年 神奈川県立弥栄東高校 歴史研究部にて縄文土器制作を始める。
1988年 武蔵野美術大学 短期大学部 工芸デザイン 木工専攻入学。 窯工研究会入部。
1990年 卒業後、薪を使った穴窯の勉強のため笠間の堤 綾子氏のもとで修業。3年間働く。
1993年~黒田 隆、矢崎 春美、外山 亜基雄、各氏に食器づくりの手ほどきをうける。
この間、今まで学んできたやきものとは相反する色絵の世界を知り大きく影響をうける。
1996年 笠間にて独立。
1998年 岩間町安居に築窯。
2002年 岩間町泉に移転。
2003年 廣野敏氏とともにつばめ窯開窯。
2008年 笠間市上郷に移転、築窯
<蚕室での個展>
2023年10月 「続アマツキツネ」個展
2021年9月 「アマツキツネ」個展
2019年11月 -飛来- 白獣展
2017年3月 「白 獣」 個展
2015年11月「白狐尽し展」個展
2014年12月~2015年3月 白狐と妖怪の陶人形(グループ展)







